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ステラインタビュー

綾野剛

2012/01/13up

綾野剛

「カーネーション」では、
ヒロイン・糸子が恋する周防龍一役として、
「開拓者たち」では、戦時下、開拓民を守りたいと
軍隊に志願する、主人公・ハツの弟・金次役として出演中。
今注目の俳優・綾野剛の魅力とは? 彼の素顔に迫る。

 

朝ドラの現場

 色気のある切れ長の目が印象的な綾野剛。一昨年に放送された「Mother」(日本テレビ系)では幼児虐待する男を、ドラマ10「セカンドバージン」では主人公の自堕落な息子を好演。今、飛躍的に注目度があがっている俳優だ。これまでどちらかといえば陰のある役のイメージが強かった綾野が、「カーネーション」では、ヒロイン糸子が恋する朴訥(ぼくとつ)な男・周防龍一役を演じている。

 「見る習慣がありませんでしたし、役者としても映画の世界に終始してきたこともあって、実は“朝ドラ”を見たことがありませんでした。でも、今回初めて拝見して『こんなに面白いんだ!』と思ったんです。収録現場に入って、さらに驚きましたよ。スタッフの方々は長年朝ドラに携わってきたベテランばかりで、スピード感が半端ない。ぼ~っとしてると置いていかれてしまいそうで。しかも皆さん、長年の経験からすでに方法論を心得ているにもかかわらず、それでも探りながら常に新しいことに挑もうとしている。それってすごくクリエイティブなことだと思うんですよ」

 一見、クールな印象の綾野。無口な人かと思いきや、その語り口はよどみない。次から次へと湧きあがる思いが、彼の口をついて出てくる。

 

テレビドラマへの
とまどい

 これまでは映画への出演が主だった綾野だが、このところテレビドラマへの出演が増えた。着実に活躍の場を広げている中で、当の本人は少なからずとまどいの気持ちもあると語る。

 「これまでインディペンデント映画(自主制作映画)、アート系や単館系と言われる映画に多く出演させてもらいました。そこで必要とされる芝居の質は、テレビドラマとは違うものだと最近気づいたんです。映画ではある意味芝居していないかのような芝居が求められているのに対して、ドラマではより分かりやすいものが求められることが多いなと。そもそも映画とテレビでは単純に画角やサイズも違うわけですし、ドラマに出演し始めた当初はとまどったし、かなり苦労しました。実は、僕と〈カーネーション〉のヒロイン・尾野真千子さんとは、役者としてのスタートが似ていて過去に共演したこともあるんです。僕同様、彼女も苦労したと言ってましたね。でも、糸子として躍動する彼女の姿を見て、ものすごく刺激を受けました。芝居に対して斜に構えず、気負いなく取り組む彼女を見て、潔いなあと。主役が尾野真千子さんでよかったなあと思いますね」

 

周防は
糸子が愛した男

 綾野が今回演じる周防は、長崎から仕事を求めて大阪へやって来たテーラー職人。妻子ある身でありながら、戦後を力強く生きようとする糸子に出会い、ひかれていく。「正直、周防は自分でも分からない部分が多い」と、彼は率直に言う。

 「言ってしまえば、糸子と周防の関係って不倫ですし、周防がどうしようもない男と言われればそうだと思います。しかも自分から行動を起こすわけではなく、あくまで糸子の行動に対して反応するだけ。男のずるさですよね。ただそうは言っても、人を好きになることは理屈では片づけられないものだし、そもそもこのドラマで重要なのはそこではないと思ったんです。責任ある人と人とがどのようにひかれ合って、それがどう波紋を広げていくか。そして、自分たちが本当に大切にしているものをどのように見いだすのかということだと。そのためには、糸子が魅力的でありさえすれば、僕が特別なことをしなくてもこの物語は成立すると感じました。演じるうえで意識したことですか? 視聴者の皆さんが感じているであろう糸子の魅力を、僕も素直に感じて、毎シーンその思いを大事にすることに尽きます。その思いこそが周防の糸子への思いと重なると思うんです。『周防とはどんな男か』と聞かれたら、『糸子が愛した男』と答えるのが、僕としてはいちばんしっくりくるんですよ」

 

役に対する不安

 分からないものは分からない、分かった気にならない、流されない、流さない。綾野の役に対するその真摯(しんし)な姿勢は、「開拓者たち」で彼が演じた金次に対する思いにもかいま見える。戦時下、満州にいる開拓民を守りたいと軍隊に志願した金次。周防にしろ金次にしろ、自分の知らない時代を生きたとされる人物を演じることが、綾野は不安でしかたないという。

 「実は、歴史を描く作品に関わることが、単純に怖いんです。なぜなら、知らない時代のことですから。確かに記録は残っていますが、それだってどこまで本当か分からない。長い歴史の中でどうしてもちょっとずつずれてしまうから。極端なことを言えば、実際はそのとき生きていた人が死んでいたことになっていることもありえるわけじゃないですか。そう考えると、やっぱり不安です。ただ、事実をたとえありのまま伝えられたとしても、それがエンターテインメントの役割なのだろうかと疑問に思う部分もあって。大切なのは、今この時代に生きている僕が、ある時代を次の世代の人にどのように伝えていくかということなんだと。今回そのことに気づかせてもらえたことに、感謝したいですね」

 何事も軽んじることなく、正面から向き合おうとする綾野。最後に今後の目標は?と尋ねると、意外な答えが返ってきた。

 「でっかい賞をとりたいとか、主演やりたいとか、そういう思いがないわけではないし、そのための努力もしています。でも何しろ経験がないから、どんなに想像しても目標になりえないんです。それよりも『あのベッド欲しい』とか『この人にこれ買ってあげたい』とか、そんな単純で普遍的なことが今の目標かなあ。人に対して誰もが思う普通のことを、忘れちゃいけないなと思っています」

 こちらの期待を真っ向から裏切る答え。そんな意外性のある言葉も、まっすぐな目でさらりと語る綾野剛。彼が今後どのような演技を見せてくれるのか、期待は膨らむばかりだ。


撮影/篠原伸佳
スタイリスト/青木貴志(macaronic)
ヘア&メーク/石邑麻由

あやの・ごう

1982年1月26日、岐阜県出身。2003年俳優デビュー。以降、映画を中心に活躍。ドラマ10「セカンドバージン」で主人公の息子役を好演。近年はドラマ界に活躍の場を広げる一方、写真や音楽やファッションにも才能を発揮する。主な出演作品は、映画『クローズZEROⅡ』『GANTZ PERFECT ANSWER』など。

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